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寄生虫が人の精神を害する漫画のような研究結果

寄生虫が人の精神を害する漫画のような研究結果

猫や豚などの加工食品から寄生するトキソプラズマという寄生虫は、人間に感染するとトキソプラズマ症を引き起こすことが知られています。

トキソプラズマの治療薬としてコロナ治療薬でも話題となっている成分アジスロマイシンでも知られています。

コロナ治療薬のジェネリックといえばイベルメクチンと代替え薬のニゾニドなどが主流となってきています。

そんなトキソプラズマに感染することで「人間の性格や行動をも変えてしまう」ことも指摘され、「男性の精神障害」に関連しているとの研究結果が報告されました。

ネズミや猫、人間などあらゆる生き物の脳に寄生し、宿主の行動をねじ曲げたり健康に害を及ぼすという恐るべき寄生生物が「トキソプラズマ」です。

特に妊婦さんには胎児へ重大な影響をとして知られるトキソプラズマが男性も注意が必要な話題となっている。

▶猫の糞便を経由して寄生虫が人をコントロール


ネズミは猫に対して根本的な恐怖心を抱いています。これは、ネズミを「死」から守る基本的な生存本能からくる感覚なはずです。
ですが、不運にもネズミにはもうひとつ恐るべき敵が存在します。それが単細胞生物の「トキソプラズマ」で、これは寄生したネズミの最も根本的な生存本能の根幹である「恐怖心」を感じなくさせてしまうのです。

以前から猫を飼うこと、飼い主に精神障害を引き起こす関連性が指摘されてきていました。
精神障害により内向的な性格になったり、統合失調症勃起不全などの傾向も見て取れるようです。
1995年の研究では「子どもの頃に猫を飼っていた人は成人になってから精神障害になるリスクが高い」との結果が示されました。

猫との関連性は長年の調査でも関する原因を他に関連性を見いだせておらず、猫の糞便からハエやゴキブリ、手などを介して人間へトキソプラズマが感染するのではとの研究結果も出ています。

◆猫がネズミを食べることでも寄生虫が広がる


そこで、カナダのマギル大学の精神医学者の研究チームは、

・「飼っていた猫がネズミを狩る習慣を持っていたかどうか」で調査を行った。

*単純に「子どもの頃に猫を飼っていたかどうか」で調査するのではない。

⇒ 調査の目的について、以下のように説明

「飼い猫は一般的にネズミ(げっ歯類)を食べることで寄生虫に感染し、その後数日から数週間に人間にうつります。」

「従って、飼い猫がネズミ(げっ歯類)を狩ることかを特定することは、単に猫の飼っている場合と比較して、トキソプラズマの感染への良い指標になるかもしれません。」

⇒ データ収集、分析手法
 研究チームは約2200人の被験者に以下のような質問からデータ収集、分析を行った。

・精神障害にかかった経験があるかどうか。

・更に、小児期に猫を飼っていたかどうか。

・飼い猫がネズミを狩っていたかどうか。

・子どもの頃の引っ越し、頭部の外傷、喫煙歴等。

⇒ 分析傾向
その結果、以下のような傾向がみられた

猫から感染リスクが高い:

  子どもの頃にネズミを狩る猫を飼っていた男性の被験者では、成人になってから精神障害を経験するリスクが高い。

ネズミを食べなければ感染リスクの増大がみられない:

  一方で、幼少期に猫を飼っていなかったり猫が室内飼いだったり、あるいは被験者が女性だったりした場合は、成人期に精神障害になるリスクの増加は見られない。

⇒ 研究チームの結果より仮説が説明:

「トキソプラズマのライフサイクルに基づいて猫の飼育と精神障害の因果関係のメカニズムが説明できる

しかし、今回の研究結果は単にネズミを狩る猫の飼育のみが関連しているのではなく、喫煙・引っ越し・頭部外傷といったその他の要因も「成人になってからの精神障害のリスク」に関わっている事を示唆していた。

トキソプラズマの感染だけで精神障害が発症するではなく、他の要因が相乗的に関係しているとも主張し、以下のように付け加えた。

「これらは小さな証拠ですが、危険因子の組み合わせが作用しているかもしれない。」

「個人小規模のリスクも、猫とトキソプラズマと小さな要因は小さくとも潜在的な公衆衛生上の問題となる」

◆トキソプラズマとは?

トキソプラズマを発見は1908年頃で現在ではこの寄生生物に関するさまざまな情報が判明しています。

理由はわかりませんが、トキソプラズマは宿主の猫の腸内でのみ有性生殖(繁殖)し猫が終宿主となります。

トキソプラズマの主な感染経路は経口感染ですが、人間は猫用トイレや猫の飲食物などを扱う際に、この寄生生物に感染してしまうことが多いそうです。

*有性生殖(繁殖)とはセックスのこと。受精をして子孫を残していく方法。

例えばアメリカの統計では5人に1人がトキソプラズマに寄生されていると言われており、世界的にみると、その寄生率が95%に達する国もあるとのことです。ただし、殆どの場合において、トキソプラズマに寄生されても無症状なようです。

しかし、最近の研究ではトキソプラズマは恒温動物の脳内の分子構造を改造していることが明らかになっており、研究者の中にはトキソプラズマが人間の健康状態や性格をゆがめる作用を持っている、と提唱する人も現れています。

トキソプラズマは猫以外の宿主の中では無性生殖で体内全体に繁殖します。感染の初期段階ではトキソプラズマ症を引き起こし、免疫不全の場合は重度の組織損傷を伴うこともあります。といっても、ほとんどの場合は免疫系に抑えられて大きな問題になることはなく、不快感や寒気、熱、全身の痛みなどの症状に襲われる程度で、数日中に免疫系により活動が抑えられます。

ただし、妊娠の初期段階にトキソプラズマに初めて感染してしまうと、トキソプラズマが発育中の胎児にも感染してしまい、胎児に重度の障害を負わせたり最悪の場合は流産してしまう可能性もあります。

初期感染時以降は、トキソプラズマが宿主の体内の嚢胞に身を隠し、特に何の症状も発現しませんが、エイズ・臓器移植・化学療法などを受けている人の場合、ひどい合併症に悩まされることがあるそうです。しかし、体内にしばらく潜伏した後は生物の免疫システムを弱め、宿主の体内で繁殖しやすい環境を形成します。なので、一度トキソプラズマに感染してしまえば、生涯この寄生生物を体に宿したまま過ごすこととなります。

◆トキソプラズマがネズミの行動をねじ曲げる

1980年代、研究者はトキソプラズマに感染したネズミが、極端に活動的になり、身繕いをほとんどしなくなるという異常な挙動に気づきました。そして1994年、オックスフォード大学の疫学者であるジョアン・ウェブスター博士が、嚢胞を体内に持つネズミは持っていないネズミと異なり、猫から逃げようとせずに逆に近づいていくことを発見しています。

ウェブスター博士はこの「ネズミが猫にすり寄っていく現象」について調査を行い、これはネズミの体内に寄生するトキソプラズマが終宿主である猫の体内に移動するためにネズミを操っているのではないか、と推測しました。その後の複数の研究から、トキソプラズマは神経作用と遺伝子発現によりネズミの行動を変えてしまうことが判明しています。

ある実験では、トキソプラズマに感染したネズミと感染していないネズミに猫のニオイをかがせてその反応を調査しています。この実験ではトキソプラズマに感染していないネズミが周囲を警戒し始めたのに対し、感染しているネズミは全く警戒心を示さなかったそうです。さらに、2011年にスタンフォード大学で行われた研究では、トキソプラズマに感染したネズミが猫のニオイに性的に興奮して引きつけられる、ということも明らかになっています。

ほ乳類の脳には「防衛」と「生殖」を司る部分がニューロン経路に並行して存在します。ニューロン経路は嗅球からスタートして大脳辺縁系で終わるのですが、ネズミの脳を解剖したところトキソプラズマに感染した個体は大脳辺縁系周辺の嚢胞が感染していないネズミよりも格段に多いことが判明しました。さらに、トキソプラズマに感染したネズミが猫のニオイを嗅ぐ際の脳の反応を観察したところ、ニューロンの「生殖」に関する経路が雌のネズミのニオイを嗅いだ際と同じような反応を示したことも明らかになっています。

これらの結果は、トキソプラズマに感染したネズミの神経作用が「防衛」から「生殖」に切り替わっていることを示唆しています。つまり、通常のネズミが危険を感じるニオイを雌の香りと勘違いしてしまうわけです。さらに、他の研究ではトキソプラズマが宿主の性行動に関する神経伝達物質の生成レベルを高めることも明らかになっており、この物質の増加を止めると、トキソプラズマに感染したネズミが猫の香りにつられて猫に近づくという奇妙な現象も起きなくなったという研究結果も公開されています。

スタンフォード大学で働く寄生生物学者のジョン・C・ブースロイド教授によれば、トキソプラズマは最初に宿主細胞に付いており、次に蓄積された外来タンパク質を細胞に注入し、宿主細胞に入り込んでミトコンドリアを移動させたり細胞内のDNAに宿主遺伝子の発現を禁じたり、さらにはトキソプラズマが繁殖しやすいように免疫反応を禁じるために宿主タンパク質を改造したりするそうです。

また、トキソプラズマの変異種をネズミに寄生させたところ、4カ月後には脳内で検知可能な寄生生物がいなくなったにも関わらず、一度感染したネズミが猫の香りにすり寄っていく現象が見られたそうで、トキソプラズマにより宿主にもたらされる行動変化は、寄生生物がいなくなっても永続するものである可能性もあります。

◆トキソプラズマ感染と人との関係

トキソプラズマの精神障害については幾つかの調査結果によれば、トキソプラズマに感染している人間の行動にはしばしば同じ特性がみられるそうです。

例えば、トキソプラズマに感染している男性は内向的で、疑い深く、反抗的。女性の場合は信頼性があり従順な人が多いそうです。
さらに、単純な反応時間を測るテストを行ったところ、トキソプラズマに感染している人々は感染していない同年代の人々よりも反応時間が遅いという特徴もみられました。

他にも、2009年にチェコで3890名の新兵に対して行われた調査では、トキソプラズマに感染している陰性の血液型を持つ兵士は、感染していない陽性の血液型を持つ兵士の6倍も多く交通事故を起こしていたことが明らかになっています。

陰性の血液型、つまりはRhDタンパク質の有無がトキソプラズマとどのように関係して交通事故の発生率を高めているのかは定かではありませんが、これらが何かしら作用していることは明らかです。

さらに、ネズミと同じように猫のニオイに人間が反応することも明らかになっています。2011年に行われた調査では、トキソプラズマに感染している学生34人と感染していない学生134人にさまざまな動物の尿サンプルのニオイを嗅いでもらったところ、トキソプラズマに感染した男性は感染していない男性よりもはるかに猫の尿のニオイに好意的な反応を示したことが明らかになっています。
ただし、女性の場合はこれとは反対の反応が現れているようで、男女で異なる特性を持つというのはフレグル氏の性格調査の結果と同じものです。

他にも、トキソプラズマ症と統合失調症の間にある潜在的なつながりも指摘されています。
Stanley Medical Research Instituteの精神科医であるE・フラー・トーリー氏とジョンズ・ホプキンス大学のロバート・ヨルケン氏による調査によると、初めて統合失調症を発症した患者の中には、トキソプラズマに感染している人の数が非常に多いそうです。
ただし、統合失調症はさまざまな要因から発症するものなので、トキソプラズマにより統合失調症が発症したと断定することはできていません。また、トキソプラズマが統合失調症を含むあらゆる精神病の原因となっているかどうかについてもまだまだ情報が足りていない、とのことです。

なお、アメリカ疾病予防管理センターは、トキソプラズマに感染することを防ぐには、料理の際には手を洗うなどして清潔さを保つことと、猫が自由に行き来している庭がある場合は手袋やマスクをしてガーデニングすることを勧めています。

トキソプラマに寄生されたからといって超人的なパワーを手に入れたり涙が出なくなったり右手が相棒になったりすることはなさそうなので、少しでも感染の可能性を減らすべく手洗いうがいなどの基本的な感染症予防は怠らないようにするのが良さそうです。



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